実家の畑を引き継いでいます。別の記事にも書きましたが、手をつけられないまま放置が続いていて、気にはなっているという状態です。
それで調べ直したのですが、農地は家や預金と同じようには扱えません。もらうときの手続きと、手放すときの難しさが、どちらも宅地とは別の話になっています。相続のときに知っておくと違うところを、順番に整理します。制度のしくみの話で、個別の判断までは踏み込みません。
相続に許可は要らない。ただし届出が要る
農地を売ったり貸したりするには、農業委員会の許可が要ります。農地法第3条の許可です。
では相続はどうかというと、この許可は要りません。相続は当事者が選んで起こすことではないので、許可という形になじまないからです。ここで安心して終わってしまう人が多いのですが、続きがあります。
許可の代わりに届出が要ります。農地法第3条の3の届出です。相続で農地の権利を取得したことを知った日から、おおむね10か月以内に、その農地のある市町村の農業委員会へ出します。
出さなかった場合や、嘘を書いて出した場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。罰金ではなく過料ですが、払うものは払うことになります。手続き自体は届出書1枚で、費用もかかりません。知らないことが理由で過料になる、という種類のものです。
相続登記は、これとは別にもう一つある
農業委員会への届出を済ませても、法務局の登記は別です。ここを一つだと思っていると片方が抜けます。
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請します。遺産分割をした場合は、その日から3年以内です。正当な理由なく放っておくと、10万円以下の過料の対象になります。
そして、ここが見落とされやすいところです。義務化より前に起きた相続も対象です。その場合の期限は2027年3月31日とされています。親や祖父母の代の名義のままになっている土地があるなら、期限はもう見えています。
遺産分割がまとまらない場合には、相続人申告登記という簡易な手続きがあります。自分が相続人であることを期限内に登記官へ申し出ておけば、申請義務を果たしたことになります。
ただしこれは義務を果たすためのもので、名義が自分に移るわけではありません。売るときや担保に入れるときには、結局あらためて相続登記が要ります。
もらうのは自動。手放すのは自動ではない
相続は許可なしで自動的に来ます。ところが、いらないから誰かに渡す、という段になると許可の世界に戻ります。入口と出口で難易度が違うのが、農地のいちばん面倒なところだと思っています。
農地を農地のまま売ったり貸したりするには、第3条の許可が要ります。2023年4月に下限面積の要件(都府県では原則50アール以上)が廃止されたので、少しは動きやすくなりました。ただ、これで誰でも買えるようになったわけではありません。取得する側が、その農地を全部きちんと使うこと、農作業に常時従事すること、周りの農地の使われ方と折り合うこと。こうした要件は残っています。
農地を宅地などに変えて売る場合は、さらに別の許可(第4条・第5条)が要ります。市街化調整区域や農業振興地域の農用地区域に入っていると、そもそも通りにくい。下限面積が廃止されても、転用の側はまったく緩んでいません。
自分で借り手を探せない場合は、農地バンク(農地中間管理機構)に貸す道があります。地域によって引き合いの有無が大きく違うので、まず地元の農業委員会に聞くのが早いです。
荒らしたままだと、税のほうが動くことがある
放置している側として、いちばん気にしているのがここです。
使われていない農地は遊休農地として扱われます。農業委員会が調査をして、意向を確認して、それでも動かない場合には、農地中間管理機構と協議するよう勧告が出ることがあります。この勧告を受けた農業振興地域内の遊休農地は、固定資産税の評価が変わり、税額がおよそ1.8倍になります。
逆に、農地バンクに貸した場合には減額される仕組みもあります。放っておくと上がり、預けると下がる。そういう設計です。
ただし、勧告はいきなり来るものではありません。調査と意向確認が先にあります。通知が来た段階で動けば、たいていは間に合うということでもあります。
どうしても無理なら、国に引き取ってもらう道がある
2023年4月27日から、相続土地国庫帰属制度が始まっています。相続や遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう制度です。地目は問われないので、農地も申請できます。制度の開始前に相続した土地でも申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる人 | 相続または遺贈で所有権を取得した法定相続人 |
| 審査手数料 | 土地1筆あたり14,000円 |
| 負担金 | 原則20万円(市街化区域や用途地域内の宅地・農地などは面積に応じて算定) |
| 通らない土地 | 建物がある、担保権が付いている、他人が使う予定がある、土壌汚染、境界が不明、急な崖、地上の工作物、地下の埋設物、隣地と争いがある |
金額を見て高いと感じるかもしれません。ただ、毎年の固定資産税と、草を刈る労力や外注費を何年ぶんか並べると見え方が変わります。どちらが得かではなく、何年で逆転するかで見るほうが判断しやすいと思っています。
なお、建物が建っていると却下されます。実家の母屋ごと手放したい場合は、先に解体するかどうかという別の判断が入ります。
では、何から手をつけるか
- 名義を確認する。法務局で登記事項証明書を取ります。祖父母の代のままなら、そこが起点です
- 農業委員会への届出が済んでいるか確認する。登記とは別の手続きです。済んでいなければ、まずこれ
- その農地がどの区域にあるかを調べる。農用地区域かどうかで、貸すのも売るのも転用するのも難しさが変わります
- 年間いくらかかっているかを出す。固定資産税の課税明細を見れば分かります。草刈りを外注した場合の見積もりも1回取ってみる
- 続ける、預ける、手放すの三つを、年単位の金額で並べる。ここまで来て初めて比べられます
今日できるのは1番だけです。登記事項証明書は法務局の窓口でもオンラインでも取れます。名義が誰になっているかが分かるまでは、その先の話はどれも机上のものになります。私もそこから始めました。
個別の農地が許可や届出の対象になるかどうか、区域の判定、相続税の納税猶予を使えるかどうかといった判断は、農業委員会、行政書士、税理士にご確認ください。この記事で書いたのは制度のしくみと、確認する順番までです。
この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。実在の人物・商品・ロゴを描いたものではありません。ナレーションは音声合成です。

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