お盆休みで有給が減っていた。これは違法? 計画年休のしくみを人事の側から説明します

壁掛けカレンダー、チェックマークの入ったリスト、書類のバインダー、観葉植物を配置したフラットイラスト。深緑をアクセントにした落ち着いた配色 知恵袋
この記事の要点を38秒にまとめた概要動画です(生成AIで作成)。

8月の給与明細か勤怠システムを開いて、有給の残日数が思っていたより減っている。心当たりがあるとすれば、お盆の数日だけ。会社からは「夏季休業」としか聞いていないし、有給を出した覚えもない。

結論を先に書きます。会社が手続きを踏んでいれば、これは違法ではありません。ただし踏むべき手続きが法律で決まっていて、そこが抜けている会社もあります。見分け方には順番があります。

私は建設業の総務で人事労務を担当していて、就業規則と労使協定を作る側にいます。作る側から見ると「どこを見れば分かるか」がはっきりしているので、その順番で書きます。

お盆を有給にあてる仕組みには名前がある

「年次有給休暇の計画的付与」、略して計画年休といいます。労働基準法39条6項に定められた制度です。

ふつう有給は、労働者が「この日に休みます」と自分で日を指定して取るものです。計画年休はその例外で、会社と従業員代表が書面で協定を結べば、あらかじめ日を決めて全員に取らせることができます。

厚生労働省のパンフレットには、夏季や年末年始に計画年休を組み合わせて大型連休にする使い方が、8月のカレンダー付きで例として載っています。年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)の14ページです。つまりお盆に有給をあてるのは、制度が想定している使い方そのものだということになります。

会社側の狙いは、全員が同じ日に休むので業務が止まらないこと。2019年4月から全企業に課されている「年5日の有給取得義務」も、計画年休で取らせた日数がそこにカウントされます。

会社が満たすべき条件が4つある

ここが本題です。計画年休は「会社が決めたから有効」にはなりません。次の4つが揃って初めて成り立ちます。

1. 就業規則に書いてあること

「労働者代表との書面による協定により、5日を超える部分についてあらかじめ時季を指定して取得させることがある」といった条文が必要です。休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労基法89条)にあたります。

2. 労使協定を結んでいること

労働組合、または従業員の過半数を代表する者との書面による協定です。ここで対象者・日数・具体的な日付を決めます。なおこの協定は労働基準監督署への届出が不要なので、「届出がないから無効」とは言えません。会社に写しがあるかどうかで判断します。

3. 5日は自由に取れる分として残してあること

一番大事な線引きです。計画年休にあてられるのは、有給の日数から5日を引いた残りだけ。付与日数が11日の人なら、計画年休にできるのは最大6日で、5日は本人が自由に使える分として必ず手元に残ります。有給を丸ごとお盆に充当されたなら、そこは制度の枠を超えています。

4. 有給が足りない人への手当てがあること

全員一斉に休ませる方式だと、入社したばかりで有給を5日より多く持っていない人が必ず出ます。この人たちについては、その日を有給の特別休暇にするか、休業手当として平均賃金の60%以上を払うか、どちらかの措置が要ります。「有給がないから欠勤、その日は無給」は成り立ちません。

自分の会社を確認する順番

いきなり上司に詰め寄っても話が長くなるだけなので、順番を置きます。

① 就業規則の「年次有給休暇」の条文を読む。就業規則を作っている会社には、それを従業員がいつでも見られる状態にしておく周知義務があります(労基法106条)。イントラか事務所の棚にあるはずです。計画的付与の条文があるかを見ます。

② 労使協定の有無を総務に聞く。「お盆の休みは計画年休ですか。労使協定はいつ結んだものですか」と聞けば足ります。制度名を出して聞くと、話が一往復で済みます。

③ 有給の残日数と、消化された日数を突き合わせる。会社は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作り3年間保存する義務があります。本人への開示義務までは条文にありませんが、自分の取得日と残日数を聞くこと自体は普通の問い合わせです。

④ ①〜③のどこかが欠けていたら、総合労働相談コーナーへ。各都道府県の労働局と労働基準監督署内に置かれていて、無料・秘密厳守で、匿名でも相談を受け付けています。会社と直接やり合う前の段階で使える窓口です。

逆に、①〜③がすべて揃っていて5日分が手元に残っているなら、それは適法に運用されている計画年休です。納得はいかないかもしれませんが、争っても結論は変わりません。

来年の8月を変えるためにできること

計画年休は労使協定で決まります。ということは、協定を結ぶ手前の段階に関われば内容は変えられる、ということでもあります。

従業員代表(過半数代表者)は、会社が指名して決めるものではありません。労働基準法施行規則6条の2で、投票や挙手といった民主的な手続きで、しかも何のための代表かを明らかにした上で選ぶことが求められています。使用者の意向で決まった代表は代表と認められず、その人と結んだ労使協定は無効と扱われる余地があります。

ここが形骸化している会社は少なくないと見ています。誰が代表なのか分からない、いつ選ばれたか知らない、という状態なら、まずそこを聞いてみる価値があります。

もう一つ。計画年休には一斉付与のほかに、班・グループ別の交替制と、個人別付与という方式があります。子どもの学校行事や家族の予定に合わせたいなら、個人別付与に近い形を要望する余地はあります。「休みを減らせ」ではなく「休む日を選ばせてほしい」という筋の話なので、会社としても検討はしやすいはずです。

総務にいる立場で言うと、この手の要望はほとんど上がってきません。上がってこないから今の形のまま毎年更新される、という面は正直あります。声が届く余地は思っているより残っています。

今日できる一手

就業規則の「年次有給休暇」の条文だけ、スマホで写真を撮っておいてください。それだけで、来年の8月に同じ疑問を持ったとき、調べ直す時間が丸ごと消えます。

この記事は制度の一般的な説明です。個別の事情に応じた判断は、お住まいの地域の社会保険労務士か、労働基準監督署の総合労働相談コーナーにご相談ください。
参考: 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省) / 年次有給休暇の計画的付与制度とは(働き方・休み方改善ポータルサイト・厚生労働省)
この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。

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