最低賃金の改定に、毎年ふりまわされない。時給の人がいない会社にも関係がある話

深緑と生成り色のフラットイラスト。段階的に高くなる階段状のバーが並び、立ち上がる位置がずれている図解 知恵袋
この記事の要点を58秒にまとめた概要動画です(ナレーションは音声合成、映像は生成AIで作成)。

今年の最低賃金は、目安が全国加重平均で1,176円です。前の年から55円上がって、率にすると4.9%。十月以降、都道府県ごとに順に発効していきます。

注意したいのは、この1,176円が目安だということです。実際の金額は県ごとの審議会が決めるので、目安を上回る県が出ます。今年も、目安の引き上げ額を八円上回った県があります。目安の数字だけで「うちは足りている」と判断すると、後から足りなくなることがあります。見るのは、自分の県の答申額のほうです。

この時期になると、賃金表を見直す会社が出てきます。うちの会社はやっていません。最初から、直す必要のない金額に決めてあるからです。

ただしこれは「気にしなくていい」という意味ではありませんでした。調べ直してみて、その差が思っていたより薄いことに気づいたので、順番に書きます。

時給の人がいない会社にも、関係がある

うちには時給のパートやアルバイトがいません。全員が月給です。最低賃金の話題が出たとき、正直なところ他人事のような気持ちがありました。

関係ありました。月給の人も、月給を時間額に直したときに最低賃金を下回っていれば違反になります。時給で払っているかどうかは関係がなく、時間あたりいくらになるかで見ます。

一日の所定労働時間 × 年間所定労働日数 ÷ 12 = 月平均所定労働時間
月給 ÷ 月平均所定労働時間 = 時間額

たとえば月給18万円、一日八時間、年間所定労働日数255日の会社なら、月平均所定労働時間は170時間です。18万を170で割ると、時間額はおよそ1,059円になります。地域によっては、この数字はもう安全圏ではありません。

一日の所定労働時間は休憩を除いた時間、年間所定労働日数は休日と休暇を除いた日数です。どちらも就業規則に書いてあります。感覚で置かず、規則から拾ってください。

足してはいけない手当がある

ここが二つ目の落とし穴でした。支払っている賃金のすべてを、最低賃金の計算に入れられるわけではありません。厚生労働省が除外するものを明示しています。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 一か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外割増など)
  • 所定労働日以外の労働に対する賃金(休日割増など)
  • 深夜割増のうち、通常の賃金の計算額を超える部分
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

危ないのは最後の一行です。通勤手当や家族手当は毎月きっちり払っているので、感覚としては賃金に含まれています。けれど最低賃金の計算では外します。「手当を足せば足りている」という数え方は通りません。基本給と、除外にあたらない手当だけで足りているかを見ます。

発効日は県ごとに違う。しかも毎年ズレる

うちは複数の県に事業所と出張所があります。ここが三つ目で、いちばん見落としやすいところでした。

最低賃金は全国一斉に切り替わりません。八月末の時点で、早い県が十月一日、いちばん遅い京都府が十一月十六日です。一か月半の開きがあります。しかもこの時点では、まだ答申が出ていない県が四つ残っています。全体が固まるのは九月に入ってからです。

去年はもっと極端でした。十月一日に発効したのは栃木県ただ一県で、十月中に発効したのが20都府県。秋田県にいたっては翌年の三月三十一日です。栃木と秋田で、ほぼ半年ずれています。つまり同じ会社の中で、県によって切り替え日が違う年があるということです。本社の県に合わせて一律に処理すると、遅い県では先に上げすぎ、早い県では間に合わない、という形になりかねません。

うちがやっている「直さなくていい設計」

それで、うちの話に戻ります。賃金表を毎年いじるかわりに、最低賃金を十分に上回る水準を最初から決めてあります。改定のたびに計算し直す作業が要りませんし、県ごとの発効日の違いにも振り回されません。

この考え方は今も悪くないと思っています。ただ、今回調べて「一度決めたら終わり」ではないことがはっきりしました。今年の上げ幅は4.9%です。この調子が続けば、余裕を持たせたつもりの金額でも数年で追いつかれます。

「直さなくていい設計」というのは、正確には「毎年の改定作業をしなくていい設計」であって、水準そのものを見ないでいい設計ではありません。年に一度、いちばん賃金の低い人の時間額と、事業所のある県の新しい金額を並べて、まだ距離があるかだけを確かめる。それだけなら十五分で終わります。賃金表を全部引き直すのとは作業量がまるで違います。

では、何から手をつけるか

  1. 就業規則から月平均所定労働時間を出す。一日の所定労働時間と年間所定労働日数を拾って割るだけです
  2. いちばん賃金の低い人の時間額を出す。月給者も対象です。時給の人がいないから関係ない、はありません
  3. 除外される手当を外して計算する。通勤手当と家族手当と精皆勤手当は入れられません
  4. 事業所と出張所のある県を全部書き出し、それぞれの金額と発効日を並べる。一律ではありません
  5. いちばん厳しい県で、あと何年もつかを見る。年5%で上がると仮定すれば、おおよその見当はつきます

今日からできるのは一つ目だけです。月平均所定労働時間は、一度出しておけば毎年使えます。うちの場合はここが出ていたので、二つ目まで進むのに時間はかかりませんでした。

なお、個別の賃金が最低賃金を満たしているかどうかの判断や、賃金規程の書き方については、社会保険労務士か、都道府県労働局・労働基準監督署にご確認ください。この記事で書いたのは、制度のしくみと、確認する順番までです。

この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。実在の人物・商品・ロゴを描いたものではありません。ナレーションは音声合成です。

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