この記事は「仮想未来記事」です。現時点の情報をもとに、これから起こりうる未来を書いています。冒頭に私が考える発生確率を明記します。確率そのものは私の主観であり、当たることを保証するものではありません。
技能実習制度が終わります。代わりに育成就労という制度が始まり、施行日は2027年4月1日と決まっています。
いま私は建設業の総務で採用をやっています。制度が変わると聞いて最初に思ったのは、書類の様式がどう変わるかではありませんでした。辞められるようになるらしい、という一点です。
技能実習では、本人の希望で職場を移ることが原則できませんでした。育成就労では、同じ分野の中で、一定の期間が過ぎ、技能と日本語の要件を満たしていれば、本人の意向で移れる形が用意されます。制度の名前が変わったことより、この一行のほうが現場を変えると思っています。
この記事は、外国人受け入れの是非を論じるものではありません。人が動けるようになった業界で何が起きるかという、採用と労務の話として書きます。
| 私が想定している未来 | 対象年 | 確率 |
|---|---|---|
| 建設業の中で、外国人技能者の引き抜きが常態化する | 2031〜2036年 | 75% |
| 受け入れを外部に任せきる会社と、日本語教育と生活支援まで自社で抱える会社に、はっきり分かれる | 2031〜2036年 | 70% |
| 人数を入れても現場の人手不足は解消せず、足りない層が職長と施工管理に移る | 2031〜2036年 | 85% |
予測1: 引き抜きが常態化する(75%)
75%と置いた理由は単純で、移れる制度になったのに、移る動機だけがそのまま残るからです。
建設業の賃金と住環境は、会社によってかなり差があります。同じ地域の同じ職種でも、寮の設備も、休みの取り方も、残業の量も違う。これまでは差があっても動けなかった。動けるようになれば、差のあるほうへ人が流れます。当たり前の話です。
そして、この流れを最初に使うのは本人ではないと見ています。人を集めきれない会社のほうが先に使う。日本語がすでに通じて、現場の段取りも分かっていて、住むところもある。採用の側から見れば、これほど条件のそろった候補者はいません。新規に呼ぶより、いる人を口説くほうが速い。
100%にしなかったのは、転籍に条件が付くからです。期間の下限、同一分野であること、技能や日本語の水準。運用が厳しく設計されれば、実際に動く人数は抑えられます。ただし抑えられるのは人数であって、動機ではありません。制度で塞げば、たぶん別の経路に出ます。
予測2: 受け入れ方が二つに割れる(70%)
いま多くの会社は、監理団体を通して受け入れています。募集も、来日前の教育も、来てからの生活の面倒も、かなりの部分を外に任せている形です。制度が変わっても、この形自体はなくなりません。監理支援機関という名前に変わって続きます。
変わるのは、外に任せたままでいられるかどうかだと思っています。
人が移れるということは、来てもらう競争と、いてもらう競争が別々に発生するということです。前者は外に任せられます。後者は任せられません。いてもらう理由をつくる仕事は、現場と会社の中にしかない。日本語を教える、資格を取らせる、住まいを良くする、家族を呼べるようにする。どれも外注できない種類の仕事です。
だから、ここを自社で抱えにいく会社と、費用をかけずに外に任せ続ける会社に分かれる。後者が悪いという話ではありません。人数が少なければ抱えるほうが割に合わないので、合理的な選択です。ただ、抱えた会社のところに人が集まるまでに、そう長くはかからないと見ています。
70%と、少し低めに置きました。中小の会社が教育まで抱えるには金も人もいるからです。補助や共同化のしくみがうまく回れば、二極化しないまま全体が底上げされる筋もあります。そちらに転ぶ可能性を3割見ました。
予測3: 足りない層が入れ替わる(85%)
3つのうち、いちばん自信があるのがこれです。
人数を入れれば、手を動かす人は増えます。増えないのは、その人たちに段取りを指示できる人のほうです。職長、班長、施工管理。図面を読んで、工程を組んで、他の業者と調整して、安全を見る役割です。
この層は外から連れてこられません。日本語で、現場の力関係の中で交渉する仕事だからです。そして、いま現場でこの役割を担っているのは、かなり年齢が上の人たちです。手を動かす人が増えるほど、指示する人が足りなくなる。人数が増えるとかえって足りなくなるという、少し奇妙なことが起きます。
私はこれと同じ構図を、前に自衛隊の話を書いたときにも見ました。無人化しても人手不足は解消せず、不足する職種が入れ替わるだけになる、という話です。今回は機械ではなく人を入れる話ですが、置き換えやすいところから埋めていくと、置き換えにくいところだけが残る。順番は同じです。85%と置いたのは、この構造がすでに現場で始まっているからで、予測というより時間の問題だと思っています。
和菓子屋の売場で見た、同じこと
店長をしていた13年のあいだにも、似たことがありました。繁忙期にアルバイトを増やすと、売場は回るようになります。ただ、増やした分だけ「今日は何をどの順でやるか」を言う人が要る。そこを増やさずに人数だけ増やすと、レジは埋まっているのに包装が滞る、という状態になります。
あのとき私がやったのは、人を増やす前に、指示できる人を1人育てることでした。時間はかかりますが、これをやらずに人数を足すと、忙しさだけが増えます。建設現場で起きようとしているのも、規模が違うだけで同じ話だと思っています。
今日できる一手
受け入れをやっている会社の方なら、いまいる外国人技能者について、2027年より後もここにいる理由が何かを一人ずつ書き出してみてください。給料以外に書けることが1つもなければ、そこが最初に抜けます。
逆に、資格を取らせる予定がある、住まいを直す約束をしている、家族を呼べる見通しを話してある、と書けるなら、その人はたぶん残ります。制度が変わる前に書き出しておくと、変わったときに慌てずに済みます。
答え合わせは2031年からです。私はこの記事を消さずに置いておきます。
この記事は未来の予測であり、制度の評価や政策提言ではありません。育成就労制度は施行前であり、運用の細目は今後も改定されます。制度の現状については、公表されている一次資料をご確認ください。個別の受け入れ手続きについては、登録支援機関や行政書士にご相談ください。
この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。


コメント