健康診断の費用、どこまで会社が出す? 法定11項目とオプションの線引きを総務の側から

健康診断の申込書とクリップボード、ペン、聴診器を描いたフラットイラスト 知恵袋
この記事の要点を58秒にまとめた概要動画です(ナレーションは音声合成、映像は生成AIで作成)。

健康診断の申込書が回ってくる時期になると、総務に同じ質問が来ます。

「胃カメラのオプション、これは会社が出してくれるんですか」

私も先日、自分の健康診断で胃カメラを受けてきました。受ける側になって初めて、申込書のあの欄が分かりにくいと思いました。法定の項目とオプションが同じ紙に並んでいて、どこまでが会社の話で、どこからが自分の財布の話なのかが読み取れません。総務の側から、この線引きを整理しておきます。

法定の健康診断は11項目。胃の検査は入っていない

まず前提から。会社が年に1回やらなければならない定期健康診断は、労働安全衛生規則の第44条で項目が決まっています。11項目です。

定期健康診断の法定項目(労働安全衛生規則第44条)区分
既往歴および業務歴の調査問診
自覚症状および他覚症状の有無の検査問診
身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査計測
胸部エックス線検査および喀痰検査画像
血圧の測定計測
貧血検査(赤血球数、血色素量)血液
肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)血液
血中脂質検査血液
血糖検査血液
尿検査(糖および蛋白)尿
心電図検査生理

ここに胃の検査はありません。胃部エックス線(バリウム)も胃内視鏡(胃カメラ)も、法律が会社に義務づけている項目ではないということです。人間ドックでおなじみなので法定項目だと思われがちですが、別枠です。

年齢によって医師の判断で省略できる項目もあります。血液検査や心電図は40歳未満(35歳は除く)で省略できることになっていて、35歳と40歳を境に受ける内容が変わるのはこのためです。「去年と項目が違う」と言われたときは、たいていここの話です。

法定項目は会社が払う。オプションは、原則そうではない

費用の考え方は、この線引きにそのまま乗っています。

法律で事業者に実施が義務づけられている健康診断は、実施する義務を負っているのが会社なので、費用も会社が負担すべきものとされています。厚生労働省もそのように示しています。ここは争いのないところです。

一方、法定項目以外のオプション検査には、会社が払う法律上の義務はありません。胃カメラ、腫瘍マーカー、脳ドック、婦人科系の検査などがこれにあたります。自己負担が原則で、健康保険組合の補助が出るならそちらを使う、という形になります。

ただし例外があって、会社の側から受けるように指定した検査は、オプションでも会社が持つのが筋だと考えられています。産業医が業務との関係で必要と判断した場合や、就業規則で「35歳以上は胃部検査を必ず受けること」と定めている場合です。会社が受けろと言っておいて費用は本人、というのは通りにくい。

整理するとこうなります。

法定11項目は会社。本人が選んだオプションは本人。会社が受けろと指定したオプションは会社。

受けている時間の給料は、どうなるのか

ここが一番よく聞かれます。そして、一番はっきりしていないところでもあります。

定期健康診断のような一般健康診断について、厚生労働省は「受診に要した時間の賃金は労使間の協議によって定めるべきもの」としています。法律で払えとは書かれていません。そのうえで「円滑な受診を考えれば、事業者が支払うことが望ましい」とも示されています。

払わなくても直ちに違法ではない。ただし払うほうが望ましい、という位置づけです。実務では勤務時間扱いにしている会社が多いと思います。半休を取らせて受けさせると、受診率が目に見えて落ちるからです。

これに対して、有機溶剤や粉じんなどの業務に就いている人が受ける特殊健康診断は扱いが違います。業務に付随して必要なものなので、労働時間内に行うのが原則で、賃金の支払いも必要とされています。同じ「健康診断」でも、根拠が違うと結論が変わる例です。

再検査の費用は、たいてい決まっていない

健診結果に「要再検査」と書かれて戻ってきたとき。この再検査や精密検査は、法律上は会社にも本人にも実施の義務がありません。義務がないので、費用の負担も法律では決まっていません。

ただ、放っておいてよい話でもありません。会社には安全配慮義務があるので、有所見の人を把握しておきながら何もしなかった、という状態は避けたい。費用を出すかどうかは別として、受けたかどうかの確認だけは会社の側でやっておくのが現実的な線だと思っています。

なお、特殊健康診断で有所見となった場合の二次検査は、これとは別で会社負担と考えられています。ここでも一般健診と特殊健診で結論が分かれます。

パートやアルバイトは、どこから対象になるのか

もう一つ、毎年確認することになるのが対象者の範囲です。判定はおおむね二段構えです。

  1. 契約期間。期間の定めがない、または1年以上使用される予定である(更新で1年以上になっている場合を含む)
  2. 労働時間。1週間の所定労働時間が、同じ仕事の通常の労働者の4分の3以上ある。週40時間の会社なら30時間以上

この両方を満たす人は、パートでも契約社員でも実施の義務があります。加えて、4分の3には届かないが2分の1以上ある人については、実施するのが望ましいとされています。義務ではないが推奨、という中間の層があるということです。

それから、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、実施後に定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。健康診断個人票は5年間の保存です。

申込書を配る前に、決めておくとよいこと

受ける側になって分かったのは、迷いが生まれるのは受診当日ではなく、申込書を書く机の上だということでした。あの紙が配られた時点で答えが書いてあれば、問い合わせはほとんど消えます。

  1. 申込書に「会社負担」と「自己負担」の印を付けておく。項目名の横に一文字入れるだけで、質問の大半がなくなります
  2. 受診時間の扱いを1行書く。勤務時間扱いなのか、半休なのか。ここが書いていないと現場の判断がばらつきます
  3. 健保組合の補助の有無と上限額を並べて書く。オプションが自己負担でも、実際に払う額は補助後の金額です
  4. 再検査の扱いを決める。費用を出すか出さないかより先に、受診したかどうかを誰が確認するかを決めておきます
  5. 対象者の名簿を、契約期間と週の所定労働時間で作り直す。雇用区分の名前で切ると漏れます

今日できるのは1番だけです。次に申込書を配るときに、項目の横へ「会社」「自己」と入れてみてください。私はこれを受ける側でやってほしかったと思いました。

個別の会社でどこまでを会社負担にするか、就業規則にどう書くかという判断は、顧問の社会保険労務士にご確認ください。この記事で書いたのは制度のしくみと、線引きの考え方までです。検査そのものの内容や受けるべきかどうかについては、医療機関でご相談ください。

この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。実在の人物・商品・ロゴを描いたものではありません。ナレーションは音声合成です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました