台風で会社に行けなかった日の給料。三つの場面に分けて考える

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この記事の要点を46秒にまとめた概要動画です(ナレーションは音声合成、映像は生成AIで作成)。

台風が近づいた夜、同じ質問が総務に集まります。「明日は出るんですか」。そして通り過ぎたあとに、もう一つ来ます。「あの日の給料はどうなるんですか」。

この二つ目が、意外と説明しづらい。休業手当が要る日と要らない日があり、しかも「会社が休みにした」のか「自分が行けなかった」のかで扱いが変わるからです。三つの場面に分けると、ずいぶん見通しが良くなります。

場面1 会社が「今日は休みにします」と決めた

労働基準法の第26条には、こう書かれています。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない

ポイントは「使用者の責に帰すべき事由」という部分です。ここに当たれば休業手当が要り、当たらなければ要らない。台風のような自然災害は、会社のせいではないのだから当然に手当は要らない、と考えたくなりますが、そこまで単純ではありません。

不可抗力と言えるかどうかの二つの条件

厚生労働省は、不可抗力による休業と言うためには次の二つをどちらも満たす必要がある、という考え方を示しています。

1. その原因が事業の外部より発生した事故であること

2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

そのうえで、状況ごとの整理も出ています。事業場そのものが直接の被害を受けて操業できない場合は、原則として使用者の責に帰すべき事由には当たらないとされています。

一方、事業場自体は無事なのに、取引先や輸送網が被害を受けて仕事が回らないので休む、という場合は扱いが違います。こちらは原則として使用者の責に帰すべき事由に当たると考えられており、休業手当の対象になりえます。取引先への依存の程度、輸送経路の状況、代わりの手段があるか、災害発生からどれだけ経っているか、休業を避けるために会社がどんな努力をしたか。こうした点を総合的に見て判断する、というのが厚生労働省の示す考え方です。

つまり「台風だから一律に手当なし」ではありません。何が理由で止まったのかで線が引かれます。

場面2 会社は動いているが、自分が行けない

電車が止まった、道路が冠水した、自宅のほうが危ない。会社は営業しているけれど出勤できない、という場合です。

これは会社が休業させたわけではないので、場面1とは別に考えます。厚生労働省の資料では、まず労働契約や労働協約、就業規則に定めがあるなら、それに従う必要があるとされています。「非常時の取扱い」「災害時の出勤免除」といった条文を持っている会社は、思っているより多い。

定めがない場合については、労使で十分に話し合い、労働者の不利益を回避する努力が大切だ、という書き方になっています。あわせて、有給の特別休暇制度を活用する方法も挙げられています。

私が総務の側で見てきた範囲でも、ここを事前に決めていない会社ほど、当日の判断が人によってばらつきます。「無理をして出た人が損をした」という空気が残ると、次の台風のときに全員が無理をします。それは安全の話として良くない。

場面3 「有給にしておいて」と言われた

これははっきりしています。年次有給休暇について、厚生労働省はこう書いています。

この年次有給休暇については、使用者は、労働者が請求する時季に与えなければならないと定められており、使用者に命じられて取得するものではありません

会社が一方的に「今日は有給扱いにする」と決めることはできない、ということです。労働者の側から「有給を使いたい」と申し出るのは当然かまいません。順番が逆になっていないかどうか、という話です。

ただし、計画的付与の労使協定を結んでいる場合など、制度として別に定めている会社もあります。自分の会社がどうなっているかは、就業規則を見るのが早いです。

台風が来る前にやっておくこと

働く側なら、就業規則の「非常時」「災害時」「休業」という言葉が入った条文を、平時に一度だけ読んでおく。それだけで、当日に慌てる度合いがだいぶ変わります。

会社の側なら、決めておくべきことは三つです。誰が休みを判断するのか、その判断をどう伝えるのか、そして出勤できなかった場合の賃金をどう扱うのか。台風が近づいてから決めると、必ず後から不公平感が出ます。

次に台風の予報が出たとき、就業規則を開いて「非常時」で検索してみてください。何も書かれていなかったなら、それが分かったこと自体が収穫です。

この記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。実際の支払いの要否は、会社の被害状況や就業規則の定め方によって変わります。個別の判断が必要な場面では、社会保険労務士にご相談ください。

参考にした資料
・労働基準法(e-Gov 法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
・厚生労働省「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A(令和3年7月15日)」https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/001235283.pdf
・厚生労働省「令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/content/000562940.pdf

この記事のアイキャッチ画像は生成AIで作成しています。実在の人物・商品・ロゴを描いたものではありません。ナレーションは音声合成です。

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